「死」を知っている子どもたち

「死」を知っている子どもたち

グランプリ受賞チームの大学生とともにホテルにて。左から:国際基督教大学1年生、国際教養大学4年生、サセックス大学修士課程1年生、筆者(堂道)

さっきから、蚊帳の中に止まっている巨大な蛾(が)から目を離せない。
はじめは壁に張り付いていたのに、追い払うのに失敗して、まさかの蚊帳内。

さらに、ベッドの下には、巨大な蜘蛛(くも)もいる。釜じいみたいなやつ。
腕立てなんてしなければ、それを知らずに済んだかもしれなかったのに。

もう、知らなかった頃には戻れない。

 

私は、今、ウガンダのビディビディ難民居住地(南スーダン難民が暮らす世界最大の難民居住地)というところで、「未来ドラフト~わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション~」グランプリ受賞チームとそのアイデアを実現しに来ている。

そして、虫に包囲されている。

グランプリ受賞チームの大学生とともにホテルにて。左から:国際基督教大学1年生、国際教養大学4年生、サセックス大学修士課程1年生、筆者(堂道)

グランプリ受賞チームの大学生とともにホテルにて。左から:国際基督教大学1年生、国際教養大学4年生、サセックス大学修士課程1年生、筆者(堂道)

蛾も蜘蛛も気になっているけど、今夜は格別、気になっていることがあって眠れない

1つ目に、日中、一緒にサッカーして戯れた難民の男の子に聞かれた質問が、ループする。

 

男の子:“Is Jackson alive?”(「ジャックソンは、生きてる?」)

わたし:“Jackson? Who is Jackson?” (「ジャックソン?ジャックソンって誰?」)

男の子:“Please, madam, I want to know. Is Jackson alive?”
(「マダム、お願い。知りたいの。ジャックソンは生きてる?」)

わたし:“I’m sorry boy, I don’t know…”(「ごめんね少年、分からないや…」)

 

これまで数々の貧しい家族や地域を訪れ、心が裂ける経験をしてきた。
過去ブログ:「生きていればまた会える」、という嘘

でも、この質問は、これまでの、どの衝撃ともちがった。
「ドクン」って心臓が止まって、身体がかたまる感覚
これが、銃撃戦や放火、捕虜、射殺から逃れてきた「難民の子ども」なんだ、と。

左:この会話の男の子。今、一番欲しいものは、教育

左:この会話の男の子。今、一番欲しいものは、教育

そして2つ目に、木によりかかって座っていた女の子との会話。

 

女の子:“When I had to run from my house,
I left my 2 year old brother to die. He had malaria”

(「逃げなきゃいけなくなった時、2歳だった弟を見殺しにしたの。彼はマラリアにかかってた」)

彼女の目からはボロボロと涙がこぼれて、私も、泣かずにはいられない。
そして、言葉に詰まる。

わたし:“I will never forget about you and your brother.
I will be praying for you. ”

(「あなたとあなたの弟のこと、一生忘れない。あなたのために祈り続けるね」)

本心。そして、ハグして一緒に泣くことしかできない。

弟を想い涙する女の子。今、一番欲しいものは、石鹸

弟を想い涙する女の子。今、一番欲しいものは、石鹸

ビディビディ難民居住地に逃れついた南スーダン難民29万人のうち、21万人が子ども
多くは目の前で家族を殺されたり、生き別れして、保護者や大人の存在なしに暮らしている

そう、難民となった子どもの多くは「死」を知っている。
それも、寿命や病気、災害によるものではなく、「人」によるもの。

私が知っている「死」と何がちがうだろう。

日本でモデルになりたいの。一緒に写真撮って!」とポーズする女の子たち

「日本でモデルになりたいの。一緒に写真撮って!」とポーズする女の子たち

いつだったか出回ったことばを思い出す。

「東京で10人死ぬと、日本が驚く。
ニューヨークで100人死ぬと、世界が驚く。
だけど、アフリカで1000人死んでも、誰も驚かない」

確かに、驚かない。
なぜなら、分かっているから。
だとしたら、「知っていて、分かっていて、なぜ今日も “何も” しなかったのか」が問いなのでは。

「すべての人々に“何もかも”はできなくとも、

だれかに“何か”はきっとできる」

私は、いつだって、ワールド・ビジョンのこの理念に戻ってくる。
眠れないけど、今日の会話を思い出しながらスヤスヤ眠れるよりは良い。

 

蛾と蜘蛛、どうしよう。

蛾と蜘蛛、どうしよう

蛾と蜘蛛、どうしよう

マーケティング第1部 コミュニケーション課
堂道 有香

 

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3月1日に待望の開幕!!
アイデア募集期間:3月1日(金)~4月21日(日)
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幼少期の14年間を中国で過ごし「アイデンティティ」に悩み、目覚めた私(サセックス大学院)
持続しなくちゃ意味がない」(東洋大学卒)
 形式的には「韓国人」実質的には「日本人」。私は、「境界人」(東京大学大学院) 
「常識」だと思っていることを「疑う」(東京大学大学院)
 学ぶうちに「憤り」や「情けなさ」の一次感情が消えていた(慶應義塾大学)

 

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Source: 【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン
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